【北島一周】グレーゾーンの夜【4日目】
最近、眠れない日が結構ある。
昨日もなかなか眠れなくて、結局気がついたときには朝の3時になっていた。
とはいえ今日は珍しくチェックアウトが11時!(どこまでも最高のキャンプ場……)
例え3時だろうと最高でも8時間眠れるわけだから気にせずゆっくり寝れるのだ。
と思っていたのに、7時半に勝手に目が覚めてしまった。あれ〜……
二度寝の努力をするかどうするかしばらく迷って、結局起きることにした。
キッチンへ行ってお湯を沸かしながらモバイルバッテリーに充電させてもらう。
お湯レモンを作って、ベッドに戻ってストレッチをしたところでふと思いついた。
周りに誰もいないし、広いし、思ったより天気がいいし、今日は外でストレッチをしよう!
外でストレッチをしてみたら、思っていたよりずーっと気持ちがよくてびっくりした。
仰向けになっている間は空を見ながら雲がゆっくり流れていくのを見ることができるし、うつ伏せになっている時は地面の草とか小さな虫とかを眺めることができる。
最近はこんな風にゆっくり何かを眺めたりしていなかったなあ。
のんびりゆっくりしたい〜とか口では言うくせに手持ちぶさたな気分になって、つい何かしてしまっていた。
晴れていたら、これからは外でストレッチするのがいいなあ。
今日もいい天気。
ムリワイで行ってみたかった所には全部行っちゃったんだけど、この場所のことが好きすぎてまだ出発したくない気分。
海を見たいな〜という気分だったのでカツオドリコロニーのところにもう一度行くことにした。
相変わらず見晴らしがよくて気持ちがいい。
少し散歩して満喫したら、やっとMURIWAIを離れる決心がついたので出発する。
本当に大好き! また来たいな。
三十分ほどで図書館がある町、HELENSVILLについた。
かなりいい図書館。
駐車場は無制限だし、充電場所や勉強場所がいっぱいあるし。
今日はお昼過ぎまでここで過ごすことにする。
……
お昼過ぎまで……と思っていたのに、結局閉館三十分前まで図書館で過ごしてしまった。
隣にあったカウントダウンで久しぶりの買い物。
買ったのはチーズと卵、野菜にワイン。
この先は店が少なくなるから、今のうちに買っておかないと。
それからNZで一番おいしいとキャンパーの間で言われれいるベジタリアンバーガーを食べるため、TAKEAWAYのお店へ。
ベジタリアンバーガーを頼んだのに、上手く伝わらなくて聞き返された。
何度か繰り返してやっと伝わる。
そして伝票を見ると、何故かFish burgerとVegetarian burgerの2バーガー頼んでいることになっている……
まあいっか、明日の朝ごはんにでもするか。
財布からカードを取り出している間、急に早口で何か言われた。
何を聞かれたのかよくわからなかったので、いつも通り断っておく。
おそらく追加のソースいる? って意味だと思う。
ソースだけでお金取られることもあるし、断っておくのが無難だ。
前にブラウニーを頼んだときも、聞き取れなくてとりあえずyes pleaseって答えたら、ほんのちょっとの生クリームを2ドルでつけられたことがあるから。
断ったら彼女は一瞬不思議そうな顔をして、伝票にNBと書かれた。えっ、どういう意味⁉︎
私は何を聞かれたんだろう……
10分くらいたって、熱々の商品がきた!
調理担当のマオリのおばちゃんが、とびきりの笑顔でHave a good night! と言ってくれた。
フレンドリースタッフ、いい店だ。わくわくしながら車に戻って袋を開ける。
渡されたのは大きな袋と、小さな袋。
ん? 小さな袋? もしかしておまけしてくれたのかな? 本当にいい店だなあ。
あったかい小さな袋を開けると、魚のフライが一つ。
魚をおまけしてくれるなんてなんていいお店なんだろう……
と思いながら、もう一つの袋を開けて理解する。
そこにはめちゃくちゃでっかいvegetarianバーガーが、一つだけ。
あれ、フィッシュバーガーは……?
つまり、この小さな袋に入っていた魚はおまけなんかではなく、ただフィッシュバーガーのフィッシュ……?
……あっ、もしかして私さっき「バンズ(パンの部分)入りますか?」って言われて断っちゃったのかな!!!???
伝票に書かれたNBって、ノーバンズって意味!、??
まだまだ慣れない注文。
そのうち自分が頼みたいものを正確に頼める日は来るんだろうか……
ただのフィッシュを食べながらホームセンターMiter10へ。
いつもお世話になっているホームセンターで、NZ中にある有名なお店なんだけど、なんと地図を見たらここを逃すと何日も巡り合えないらしい。
ということはガス缶が最後の一本だから、どうしても買わないといけない。
ところがなんだかめちゃくちゃ高かった。いつも買っているガスはがなくて、代わりに二倍くらいの値段のガスだけが並んでいる。
これは困った、あまりにも高すぎて買う気がしない……田舎に来すぎちゃったかあ。
カセットコンロ用のガスはもうなくなるけど、キャンプ用のガスはまだあるから、一週間くらいそれで凌ぐことにしよう。
時刻は17:30。暗くなってきた。ここから目的地までは約1時間。
そしてその途中に、ちょっとだけ気になっていた滝がある。
もう日が暮れているけどまだ間に合うかな?
ともかくバーガーが冷める前に、ちょっとだけ気になっていた滝に駆け込んで夜ご飯にしよう。
車を走らせて20分で滝に到着、急いでバーガーを食べる。おいしい。めちゃくちゃおいしい!
噂通りめちゃくちゃ美味しい。
高さはもちろん、全体的に大きすぎて一気には食べられない。
だけどあったかいうちに食べたい。
そう思って無理して食べたらあっという間に気持ちが悪くなった。美味しかった!
ふと外を見るともうほとんど真っ暗。
滝に行かなくちゃ!
歩いて15分くらいで辿り着くって書いてあったから、走れば完全に暗くなる前に行けるはず。
バーガーでたぷたぷのお腹を抱えて走る。
滝はどこ? 少し走ったところで行き止まり。なんと、工事中で封鎖!
頑張って走ったのに……
地図を見ると滝は2つあるらしい。一つはもうすでに通り過ぎていた。
ってことは見れるのかな?
慌てて走って戻ると、確かに滝の音がする。
何にも見えないけど!
図書館で5時間近くゆっくりしていたのに、最後の最後でバタバタしてしまった。
車に戻ってアンナチュラルを見ながらバーガーの続きを食べて、再出発。
時刻は6時過ぎ、もう真っ暗。夏は9時過ぎまで明るかったのになあ。
今日は泊まる場所は、この辺りでは珍しい無料のフリーダムキャンプ場。
しかも本当は私は泊まっちゃいけない場所。
どういうことかというと、規程を満たしたセルフコンテインカー略してSCCしか泊まっちゃいけないキャンプ場なのだ。
SCC、セルフコンテインカーっていうのは車の中に下水を処理する装置がある車のこと。
装置って言うと大袈裟だけど、つまり下水を貯めるタンクにつながっている簡易トイレや水の出るキッチンのようなものがあればいいってことだ。(もちろん他にも審査項目はあるけど、メインは下水装置だと思われる)
私が乗っているグランディスでも工夫を凝らせば一応SCCになることはできる。
こんな小さな車にトイレをどうやって作るのかは謎だけど、実際には使わないとしても装置だけあれば審査を通っちゃうらしいのだ。(実際にオデッセイやグランディスのSCCを見たことがある。グレーゾーンと言われているけど)
だから多分超頑張って作ればSCCになれる。
だけどあまりにも面倒くさいし、お金もかかる。だから私はずっとただの車で旅をしている。
そうすると泊まれるキャンプ場は結構少ない。
だから今日はSCCのみOKのキャンプ場でこっそり泊めて眠る予定なのだ。
もちろん普段はそんなことしない。
だけど、ちょうどいい場所にキャンプ場が何もないんだもの……
だからといって適当にその辺で車中泊をすると、地元の人に通報されるなどして警察に見つかった場合は一晩で200ドル/約一万五千円の罰金。
だから適当に公園で寝るわけにも行かなく、私は基本的にはちゃんと車中泊OKの場所を探して泊っている。
今日のキャンプ場は港の駐車場。トイレもあるし、広い。
SCCじゃない車が泊まった場合はどうなるんだろう? もしも通報されちゃったらやっぱり罰金なのかなあ……ちょっとドキドキする。
おそらく見つからないとは思うけど、港だからもし地元の人が船を出すために朝早く来て、その人がすっごく用心深い人だったらちょっと危ない。
まあ、こういうことをするのは初めてじゃないんだけどね……あと、結構みんなやってるんだよね……
SCCのみOKの理由はいくつかある。
大きな理由は、その場所にトイレや水場がない場合だと思われる。
水場を兼ね備えていない車が泊まることになると、その環境を壊してしまうから。
川で食器を洗ったり、野糞しまくったり、そういうことがありえるのだ。
えっと、つまり、到着してから一度も外に出ず日が登ったらすぐに退散すれば多分大丈夫だよね。
だから私は日が暮れるまで待っていたのだ。
到着するとそこにはずら〜っと並んだSCCの行列。
立派なキャンピングカーがいっぱいだ。そこにスッと紛れ込んで、今日記を書いている。
時刻は夜の9時。
雨が降り出して、雨の音を聞いている。車の中で聞く夜の雨の音はかなり好きだ。
明日はできるなら日の出前の7時ごろにはここを出たい。
バレない前に……
今日は早く眠れますように。