【北島一周】偶然の再会【37日目】
朝5時、周りの子供たちが起き出した。
いやもう本当うるさいの……朝からすごい。すごいうるさい。
どたどたばたばた、ぎゃーわーきゃーって、朝5時から!、!
耳栓をしていたにも関わらず起きてしまったよ……
もちろんうるさくたっていい。一泊二日の山登りなんて楽しいに決まってるし。
学校の友達たちとお泊まりなんて、しかも朝から早起きしてなんて日の出を見に行くなんてテンションあがるもの。
でも彼らの跡を追って頂上に登る気力はないなあ……どうせ頂上も子供たちでごった返しているだろうし、と寝袋の中でしばらく絵を描いていました。
45分後(信じられる? 朝から全力うるさい45分間)やっと彼らが出て行って、ハットは打って変わって静かになった。
すごい。お子様たちのパワーがすごい……!
昨日避けていたキッチンに行くと、おっちゃんが座っていた。
おはよう、って言ってから白湯が飲むためにガスを借りる。
だけどうまくつけれなくて、そうしたらおっちゃんが助けてくれた。
そのままポツポツ少しだけお話。
あなたはオーナー? って聞いたら、いや、住んでいるだけって言ってたから管理人ってことだと思う。
にぎやかなお子さまたちは高校生だそうだ。うん、高校生のパワーだよあれは……強かったな……
お湯を飲んで、あまっていたサンドウィッチを食べて、それじゃあ行くね、ってハットを出発。
ハットを出てすぐ、日の出が見えた。
うう、きれいだな……頂上の子供たちがちょっと羨ましいなあ……
だけど、輝く山が見れるのはこの場所だからこそ。
頂上からの景色も、こうやって下から色づく山も両方見れたのはよかった。
おっちゃんに下りは簡単だよ、って言われていたけど、太ももが痛くてあまり簡単ではない……
こんなに痛いのは久しぶりだ。
筋肉痛っていうか、昨日岩から降りるときに楽しくてぴょんぴょん跳ねまくって痛めた気しかしない。
とはいえノンストップで2時間15分ほど。
あっという間だった!
これなら一泊しなくてもよかったけど、夕陽と朝日が見れたのは泊まったからこそだな。
18時間ぶりのグラ子! ただいま〜
さて、私はここ三日ほど空き時間を全て絵に費やしています。
昨日も、山頂でも描いていたし山小屋でもひたすら絵を描いていました。
というのも今日とても大きな締め切りがあるからなんです……!
なのにまだ終わっていない、そして充電もないからつづきをかけない、ということで図書館へ。
ニュージーランドは今公共施設に行くときにはチェックインをする必要があって、わたしも入り口で紙に名前を書きました。
そしてふと上の名前に目が留まった。
○○&○○……2人で来てる人達は&をつけたりするんだ、なんかかわいいなあ。
それにしてもなんかこの名前……知ってる気がする……
いや、気じゃなくてめちゃくちゃ知ってる!!!
この衝撃はどうしても私にしか分からないと思うんだけど、記号として見ていたアルファベットが急に英語に変わり、その名前を理解して鳥肌が立った。
その二人の名前は私のよく知っている名前。
二年前、神奈川県の藤野という街に住んでいた時に会ったニュージーランドの親子の名前だったのだ。
彼らはその時短期旅行で日本を訪れていて、私は知り合い伝てに紹介してもらって2回ほど一緒にご飯を食べたことがあった。
彼らはビーガンで、食事の前に祈りではなく小さくてきれいな歌を歌う。食事、ほとんど分からなかったけどお話も含めて少しも忘れられない、本当にいい時間を分けてもらったひとたち。(彼らは仏教に基づく瞑想やマインドフルネスなどのリトリート施設のひとたち)
わたしの人生の中で、あんなに透明できれいであたたかい人たちに会ったことがない、そのくらいの人たち。
きれいな気持ちじゃないと目の前に立つことも話すこともできないくらいの気持ちになる人たち。二年前の私はほとんど会話ができなかったけど、それなのに忘れられなかった。そのくらいの大きな時間、ひとたち、
その親子の名前がそこにはあった。久しぶりに鳥肌が立った。
すぐに周りを見渡すと、彼女たちは絵本コーナーで本を選んでいるところだった。
何も考えず、すぐに声をかけた。
「あの、わたしのこと覚えている? 日本で会ったの、藤野で」
声をかけると彼女は一瞬戸惑い、それでもすぐにとても驚いた顔をした。よかった、覚えていてくれた!
わたしは今でもあなたのくれたショールを使ってるよ、というと、ミユキは私たちに絵を描いてくれたの覚えている? と言われた。
小さかった女の子は12歳になっていて、すごく小さかったのに私と同じくらいの身長まで伸びていて、とにかく私たちはずっと驚きっぱなしで。
彼らがこの地域付近に住んでいることは知っていたけど、彼らの家からはかなり遠いこの場所で会えるなんて思っていなかった。
彼らに会いに行くことは私にとってすごく挑戦で、だからずっと迷っていた。
彼らはとても美しい人たちだから。
行っていいのか、行かないほうがいいのか分からなかった。軽い気持ちで行く場所じゃないって分かっていたから。
それでもこうして出会えたってことは、行っていんだろうなあ。
電話番号を教えて、必ず会いに行くね、と別れた。
彼らは今週末オークランドに行く用事があるそうだ。来週あたり、会えるかしら。
そこまでにわたしの気持ちは整うかしら。
興奮冷め切らぬまま、絵を描くことに集中し、あっという間に閉館。
数日で終わらせようと思っていたコロマンデル半島だったけど、予定が少し変わった。
急がないでゆっくり回っていい。
三泊目の図書館へ戻り、ひたすら絵を描き続ける。
途中、fracoco先輩や百花と電話をしつつ、とにかく描く、描く、描く!
いろんな気持ちで頭がいっぱいだ。