【北島一周】ロックダウン再び【10日目】
起きた。
今日も雨! 嫌だな〜〜連続して雨。
出来るだけ進みたいのに雨だとやる気が削がれる。
それでも進まなくちゃ、ととりあえず起きると、
昨日の夜ベンチに座っていた謎のお兄さんが、まだそこにいた……
ええ〜っ、雨も降ってたしわりと寒い冬の夜に一晩中⁉︎
やっぱり昨日声かけてあげればよかったかな。
スマホの電源を入れると、イラストレーター仲間のユリエさんからLINEが届いていた。
オークランドは今日のお昼からレベル3(ほぼロックダウン)になるって………
え!?
急に!? 何があったの!?
慌てて調べようとすると、今度はスマートフォンの緊急アラートが鳴り出した。
なんと今日の正午からオークランドはレベル3(ロックダウン)、それ以外の地域もレベル2になるらしい。
これは大変、図書館に行って調べなきゃ……
とりあえず車から出る。
周りの様子を見てみると、どうやらここはブッシュウォークのある散歩道の駐車場のようだった。
泊まった場所にブッシュウォークがあるなんて最高!
ロックダウンのことは一度忘れて、朝の散歩に出かけました。
しばらく歩くと、滝が現れた。
ここはとってもいい場所だ! ブッシュウォークも気持ちが良かったし、急に現れる滝もかなりいい感じ。
しかも車中泊OKのキャンプ場でもある。水飲み場もあるし最高だ〜
このまま1.5kmほど歩くと、ファンガレー滝という滝にも行けるらしい。
歩くか迷ったけど、午前中に図書館にも寄りたいから、そこには車で行くことにした。
あー、でかいなー
滝は明るいところより暗めの方が好きだから、そこまで刺さらなかった。
周りはピクニックエリアになっていたし、人もそこそこいたのでいい憩いの場所なのかも。
その後はとりあえず図書館へ。
ロックダウン再びってどういうこと⁉︎
急いで色々調べる。
ニュースを聞いた人たちもどんどん図書館にやってくる。
ネットを検索しつつ聞き耳を立てていたら、少しだけ状況が分かった。
オークランドで感染源の不明なCOVID-19 感染者が四人出たそうだ。そのため緊急的にオークランドは今日の正午から金曜日の深夜までレベル3になるらしい。
オークランド以外はレベル2だから図書館は開いているけど、念のためこの図書館も午後から閉館。
ファンガレーでは中央図書館だけ開くようになるらしい。
そしてレベル2でも空いている図書館では、名前や電話番号の記入が必要になるそうだ。
ロックダウンのために本を借りに来たよ! という人が結構いてにぎやか。
この取り決めは急に決まったことらしく、図書館の人もバタバタしていた。
なんてこった……
レベル2はまだ旅行が可能。
とはいえ閉鎖するキャンプ場も出てくるし、いつレベル3になってもおかしくない状況だ。
もしオークランドのようにレベル3になってしまったら、今度は一切地域から出ることができなくなり旅行は禁止になる。(というかノースランドはオークランドとしか隣接していないので必然的に孤立状態になっている)
もしレベル3になってしまったらキャンプ場も閉鎖されるから、なんとかして滞在できる場所を見つけてしばらく篭るしかなくなるのだ。
どうなるのかはまだ分からない。
とりあえずは三日間の措置だけど、だけどそんな簡単には緩くならないだろうしなあ……
旅行禁止の時に車旅をしていて、もし警察に止められたら?
パスポートも免許証もないのに!!
久しぶりにちょっと不安になる。
焦ってもどうしようもない、そう思ってるのにぬかるみにはまって動けない。
……比喩とかじゃなく、本当に。
軽い気持ちで寄った場所、さあ帰ろうと脇道の芝生の上でUターンしようとしたら進まない。
本当に動けなくなってしまった。
焦りすぎて写真を撮らなかったんだけど、そこはものすごい坂で、ドライブモードにしているのに後ろにどんどん下がって落ちていっちゃって。
そして一番下のぬかるみの植え込みの中に入っちゃったんですよね……
信じられない……
前に進もうにも後ろに行こうにも進まず、半泣きであたりを見回す。
誰もいない、本当にやばい。
グラ子頑張れ、動いて〜〜〜! とアクセルを踏めば、車の後ろ側から煙。
免許証もパスポートもないのに警察を呼ぶことになるんだろうか。
最悪すぎる。
とりあえず一旦落ち着いて、でもどうしたらいいか分からなくて、なんとなくハンドルを右に切ってみた。
そうしたらなんと、ゆっくりだけど車が動く!!!!
試行錯誤することしばらく、なんとか私はぬかるみを脱出することができたのでした……
うわ〜〜
グラ子ありがとう〜〜〜!
ロックダウンがなんだ、パスポートがなんだ。
とりあえず生きてる、それだけで頑張ろう。
ということを、森を歩きながら考えていた。
形が奇妙な木も私を励ましてくれているようだ。
雨は小雨になっていた。
雨の日はブッシュウォークがとっても気持ちいい。
空気が澄んでいて、しっとりしていて、緑が艶やかで。
道の終わりには大きな木があった。
私のこの不安を吸収してほしくて、受け止めてほしくて、ぎゅうぎゅう抱きついておいた。
これはね、つるつる滑りながらも抱きつこうと頑張っている私。
元気そうでしょ……
森を歩いたり木に抱きついたり、泥の上を裸足で歩き回っていたらちょっとずつ元気が出た。
そしてここはただの森じゃなくて、昔イギリス軍対マオリ族の戦争があった場所でした。
散歩をしつつその歴史について学べる場所です。
さっきのはその一部のブッシュウォークだったんだけど、超よかった。
でこぼこしているのは、居住地あとではなく戦争の跡。
ニュージーランドの歴史的に、そしてマオリ族にとって重要な場所だそうです。
メインロードから少し離れているからか、人の気配は0でした……
散歩を終えてもう一度、今度は別の地域の図書館へ。
入るとすぐに司書さんが紙を持って待ち構えている。
お昼を過ぎてレベル2になったから、どこに行っても自分のことを記入しなければ行けなくなったのだ。
久しぶりのレベル2、追跡の始まり。
ちょっと緊張しながら名前と電話番号を言うと、彼女はとってもいい笑顔で「brilliant!」と言った。
やさしい。
私の顔、不安そうだったろうなあ。一気に緊張が解けた。
名前と電話番号を答えて、「brilliant」って言われただけなのに、なんだかも胸がいっぱいになってしまった。
机に座って、充電をしながら戸籍謄本を日本からニュージーランドへ送るための手続きを再開する。
すると、斜め前にいたマオリ族の人が話しかけてくれた。
どこの国から来たの? よろしくね、って。
そしてニコニコしながら飴をくれた。うわ〜〜、本当にやさしい。
不安な気持ちだったから、やさしさが本当に嬉しくてしょうがない。
しばらくして、彼女に電話がかかってきた。
「KiaOra〜」
お〜、電話をとったときの挨拶がマオリ語だ!
そしてそのあともちょっとだけマオリ語、そしてすぐ英語。
マオリ族もマオリ語と英語を混ぜてるって聞いてたけど、やっぱりそうなんだな〜
帰りに、飴くれてありがとうって声かけたら、「Have a good day!」って言われた。
さっきのやさしい司書さんにもありがとうって声かけたら、同じように「Have a good day!」って。
嬉しい。
なんてことない挨拶なんだけど、一人ぼっちでいろんなことに押しつぶされそうだったからとても嬉しい。
治安はよくなさそうだけど、人はいい場所だなあ。
むしろ貧困層の人が多めだからか、優しい人も多い気がする。
ここのことを詳しく知らない、そして一瞬で通り過ぎるだけの私だからそう思うんだろうけど。
あったかい気持ちをいっぱい抱えて、キャンプ場へ向かった。
今日のキャンプ場は15ドル(1000円)、とっても良かった!!
まず良かったのが、クレジットカードが使えるところ。
パスポートの再発行のために、出来るだけ現金を使わないようにしている今の最重要ポイントです。
そして無料シャワー(充電器付き)とキッチン。
よくある15ドルキャンプ場だけど、充分です〜〜最高。
ありがたい。
オーナーのおばちゃんも優しそうだった。
一人なの!? ってすごく驚いていたけど。
あとnon-power site(電源なし・ちょっと安い)で、って言ったらちょっと悲しそうだったけど。
夜は絵を描いて、キッチンでリゾットを作って食べた。
キッチンにはキャンパーっぽくない二人組がいて、その人たちにコンロの使い方を教えてあげたりもした。
いつものごとく英語が全く出てこなくて、「ここ押せ、そして、熱、熱、熱!!」みたいな英語を喋ってただけなんだけどね……(push this switch,and heat heat heat!!)
だけどおじいちゃんとても感謝してくれたなあ。
隣の若いお兄さんはすごい顔してたけど……
今日は会う人みんな優しくていい日だったなあ。
ロックダウンになったことだけが少し不安だけど。
ひとまずは金曜日の深夜まで。そのあとはどうなるんだろうなあ……
パスポートは手に入るんだろうか……